Agent Skillsはどんな仕事に使える?Skill化しやすい仕事と、作り込みが必要な仕事
「Agent Skillsを作ってみたいが、どの仕事から始めればよいか分からない」「毎回同じ指示や修正をしているが、Skillにするほどの仕事なのか判断できない」。Agent Skillsの仕組みを知ったあと、このような疑問が出てくることがあります。
Agent Skillsは、仕事の手順、判断基準、参照資料などをフォルダにまとめ、AIが必要なときに読み込めるようにする仕組みです。毎回同じプロンプトを入力する手間を減らすだけでなく、普段は人の頭の中にある進め方や確認観点を、次の仕事でも使える形にできます。基本構造やSKILL.mdの作成手順は、Agent Skills(SKILL.md)の作り方ガイドで詳しく解説しています。
ただし、繰り返している仕事なら、何でもすぐSkillにすればよいわけではありません。毎週行う仕事でも、進め方や良し悪しの基準が曖昧なら、安定したSkillにするには作り込みが必要です。反対に、手順が明確で簡単にSkill化できる仕事でも、年に一度しか行わないなら、作る効果は限られます。
最初に扱う仕事は、 「Skill化する価値」と「Skill化しやすさ」 を分けて選んでください。
この記事では、この2つの見方と、比較的始めやすい5種類の仕事を説明しています。業務別の候補を幅広く見たい場合は、Agent Skills活用例42選|仕事で使えるユースケースを業務別に紹介も参照してください。候補を選んだ後は、実際の仕事を1件進め、そこで直した手順から初版Skillを作ります。
この記事のまとめ
- 繰り返す頻度、手直しの負担、上司や専門家による差し戻しが大きい仕事ほど、Skill化する価値が高まります。
- 過去の成果物、人の修正、判断観点を集められる仕事ほど、Skill化しやすくなります。 完成した業務マニュアルがなくても、実際の仕事に残っている材料を使えます。
- 上司が重視する観点を初稿へ反映すると、成果物の品質を高めるだけでなく、提出後の差し戻しと再修正を減らせます。
- レビュー、情報収集、整理・抽出、定型変換、手順実行は比較的始めやすい仕事です。記事作成や企画も、進め方と評価基準まで整えればSkill化できます。
- 最初から完成したSkillを作ろうとせず、想定フローで実際の仕事を1件進めてください。そこで人が直した手順を反映してから、初版Skillへまとめてください。
1. Agent Skillsの活用先は「作る価値」と「作りやすさ」で選ぶ
Agent Skillsで最初に扱う仕事は、「作る価値」と「作りやすさ」の2つに分けて選んでください。 簡単にSkill化できる仕事が、必ずしも最も役立つ仕事とは限らないためです。
たとえば、毎週作成する会議レポートで、担当者ごとに形式が変わり、上司から同じ修正を受けているとします。この仕事は、繰り返す回数が多く、手直しと差し戻しも発生しています。過去のレポートや上司のレビューコメントが残っていれば、判断材料も集めやすいため、最初のSkill候補になります。
一方、年に一度だけ行うファイル名の変換は、手順が明確でSkill化しやすい仕事です。しかし、既存のコマンドや短いプロンプトで対応できるなら、Skillを作って維持する効果は小さくなります。 作る価値と作りやすさを分けると、最初に選ぶ仕事を見極めやすくなります。
Skill化する価値は、繰り返し減らせる負担で考える
Skill化する価値は、仕事の難しさではなく、 同じ手順や判断を再利用したときに、どれだけ負担を減らせるか で考えます。
確認したいのは、主に次の点です。
- 同じ仕事を繰り返しているか
毎日、毎週、案件ごとなど、同じ流れを何度も使う仕事ほど再利用する機会があります。 - 毎回同じ説明をAIへ伝えているか
文体、確認項目、参照先、保存形式などを繰り返し入力しているなら、Skillとしてまとめる価値があります。 - 人による手直しが繰り返されているか
AIの出力後に、同じ並び替え、削除、補足、表記修正をしている場合、その修正を次回の初稿へ反映できます。 - レビュー後の手戻りが大きいか
上司や専門家から同じ指摘を受け、提出者が何度も直している仕事は、提出前にその観点を確認する効果が大きくなります。 - 複数人が同じ進め方を必要としているか
チーム内で同じ説明を繰り返している仕事は、Skillを共有することで判断や形式をそろえやすくなります。
上司や専門家から同じ指摘を受けている仕事は、提出前にその観点を使うことで、品質向上だけでなく差し戻しと再修正の削減も期待できます。具体的な観点の見つけ方は、第2章で説明しています。
Skill化しやすさは、判断の材料があるかで考える
Skill化しやすさは、「単純な仕事か」「文章が短いか」だけでは決まりません。重要なのは、 AIへ渡せる判断材料が実務の中にあるか です。
たとえば記事レビューなら、過去の記事、編集者のコメント、修正前後の原稿が判断材料になります。完成した業務マニュアルがなくても、実務で使われた成果物や修正履歴が残っていれば、初版Skillを作れます。
反対に、毎回目的が変わり、良し悪しの基準や完成後の確認方法も決まっていない仕事は、安定したSkillにするまで時間がかかります。その場合は、実際の仕事を進めながら、再利用できる手順と判断を見つけてください。
4つの組み合わせで、最初の候補を見分ける
2つの軸を組み合わせると、候補は4種類に分かれます。
| 判断材料を集めやすい | 作り込みが必要 | |
|---|---|---|
| Skill化する価値が高い | 最初に試す。例:毎週の議事録整理、上司が毎回レビューする資料の事前チェック | 結果を確認できる工程から試す。例:記事企画、提案作成、新市場の調査 |
| Skill化する価値が低い | 短いプロンプト、テンプレート、既存ツールで対応できるか確認する。例:年1回の定型変換 | 現時点では見送る。頻度や必要性が高まったら見直す |
最初に選びやすいのは、繰り返す価値が高く、判断材料も集めやすい仕事です。 価値は高いものの作り込みが必要な仕事は、次の実務で結果を確認できる工程から始めてください。細かなSkill分割は、実際に使って手順や判断基準が大きく分かれてから検討します。
Skill化しやすいかを判断するには、過去の成果物や修正履歴など、実務に残っている材料を確認してください。足りない観点は、Skillを作る段階で追加調査できます。

2. Skill化しやすい仕事には、判断に使える材料が残っている
Skill化しやすい仕事とは、単純な仕事ではなく、AIに渡せる判断材料が残っている仕事です。 完成した業務マニュアルがなくても、過去の成果物や人が直した内容を見れば、普段どのように仕事を進め、何を基準に確認しているかを取り出せます。
たとえば、提案資料を作るたびに上司から「最初に結論を出す」「数値の比較条件をそろえる」「相手に求める判断を最後に書く」と修正されているなら、その指摘は次回の資料にも使える判断材料です。反対に、完成した資料だけを集めても、なぜその構成になったのか分からなければ、AIは表面的な形式しかまねできません。
成果物だけでなく、修正前後の違いから判断を取り出す
最初に集めたいのは、AIへ入力した情報と、実際に完成した成果物です。 記事なら企画メモと公開原稿、会議レポートなら文字起こしと提出版、調査なら依頼内容と最終レポートが該当します。入力と出力が対になっていると、何を読み取り、どの情報を残し、どの形式へ変えたのかを確認できます。
さらに役立つのが、修正前と修正後の成果物です。修正前後を比べると、人が「不要な情報を削った」「結論を前へ移した」「根拠を追加した」といった具体的な変更を見つけられます。良い完成例だけでなく、差し戻された資料や採用されなかった案も、避けるべき出力を知る材料になります。
集める対象は、次のようなものです。
- 入力と完成した成果物
元データから何を選び、どの形へ仕上げたのかを確認できます。 - 修正前と修正後のファイル
人がどこを直し、何を良しとしたのかを比較できます。 - テンプレートやチェックリスト
必須項目、並び順、表記、提出前の確認事項を取り出せます。 - 作業中に追加した指示
最初の依頼だけでは足りなかった前提や、先に確認すべき条件が分かります。
大量の事例が必要とは限りません。まず数件を見比べ、繰り返し現れる修正や手順を探してください。案件固有の変更まで一般的なルールにすると別の仕事で邪魔になるため、「毎回使う判断」と「今回だけの要望」は分けて扱ってください。
上司や専門家のレビュー観点を、提出前の確認に使う
上司、編集者、法務担当者、その領域に詳しい人のレビューコメントには、成果物を判断するときの観点が表れます。 すでに残っているコメントや修正履歴をAIへ渡し、繰り返し指摘されている内容を整理すると、ゼロからチェック項目を考えずに済みます。
ここで得られるのは品質向上だけではありません。 実際に上司が確認する観点を初稿や提出前のレビューへ入れると、提出後に同じ指摘を受けて差し戻される回数と、担当者の再修正を減らせます。 レビューする上司に新しい管理作業を依頼するのではなく、すでに行われたレビューを次回へ再利用する考え方です。
たとえば、上司が営業提案書で重視している点を整理するとします。過去のコメントから、次のような傾向が見つかるかもしれません。
- 相手の課題と提案内容がつながっているか
- 費用や効果を比べる条件がそろっているか
- 自社に都合のよい主張だけでなく、制約も示しているか
- 読み手が次に判断する内容が明確か
この観点を使ってAIに提出前レビューをさせれば、上司の代わりに最終承認をさせるのではなく、明らかな抜けを先に見つけられます。過去に「ここは直さなくてよい」と判断された例も一緒に渡せると、必要以上に書き換えるのを防ぎやすくなります。
AIに重要な観点を調べさせ、Skillへ補う
過去の成果物やレビューは、実務に合ったSkillを作るための中心的な材料です。さらに、 対象の仕事で現在重視されている観点をAIに調査させると、社内の実例だけでは気づかなかった確認項目を補えます。
たとえば記事レビューSkillなら、過去記事と編集者の修正からレビュー観点を整理したあと、最近のSEOでどのような内容が重視されているかを調べます。Googleの公式情報には、読者が目的を達成できる内容か、独自の情報や分析があるか、情報源と専門性が伝わるか、事実誤認がないか、タイトルが内容を正しく表しているかといった自己評価の観点があります。
AIには、これらの観点と過去の編集レビューを比較させます。すでに確認できている項目は残し、抜けていた「独自情報」「根拠の示し方」「読後に読者が目的を達成できるか」などを、記事レビューSkillの確認項目へ追加します。
同じ考え方は、提案資料レビューやコードレビューにも使えます。実務で使われているレビュー観点を軸にしながら、その領域で重要な観点をAIに調べさせ、自社の確認項目に足りないものを補います。
次の仕事で良し悪しを確かめられると改善しやすい
判断材料を集めても、実際の仕事で使えなければSkillの良し悪しは分かりません。 初版を使った結果、担当者がどこを直したか、必須項目を満たしたか、上司から同じ指摘を受けたかを確認できる仕事は、次回に向けて改善しやすくなります。
細かな管理表や承認フローを作る前に、まず1件の仕事で使ってください。同じ問題が出た箇所や、実行中に追加した説明をSkillへ反映してください。 普段の成果物とレビューをそのまま改善材料にできる仕事ほど、無理なく育てられます。
3. Skill化しやすい5種類の仕事と、始めやすい理由
自分の仕事に近い候補を探すときは、職種名だけでなく、過去の判断材料を使いやすいかを確認してください。 この視点で見ると、最初の候補は「レビュー・改善」「情報収集・調査」「整理・抽出」「定型変換」「手順実行」の5種類に分けられます。
5種類に共通するのは、過去の成果物、人の修正、参照先、完成形などを集めやすいことです。同じ種類でも、案件ごとに基準が大きく変わる仕事や、結果を確認できない仕事は作り込みが必要になります。
レビュー・改善:人の指摘を次回の初稿へ反映しやすい
レビュー・改善は、すでにある成果物を基準に沿って確認する仕事です。ゼロから内容を考える割合が比較的小さく、過去の指摘や修正前後から判断観点を取り出せるため、最初のSkill候補に向いています。
考えられるSkill案には、次のようなものがあります。
- 記事レビュー:記事を媒体のルールと編集者の観点でレビューする
- 提案資料レビュー:提案資料を上司が重視する点で提出前に確認する
- コードレビュー:コードをチームの規約と過去のレビュー指摘に沿って確認する
- ブランド表記チェック:ブランド表記や文体のずれを公開前に見つける
- 申請前チェック:申請書の不足項目を提出前に確認する
初版を作るときは、過去の成果物、レビューコメント、修正前後、既存のチェックリストを使ってください。特に、同じ上司や専門家が何度も直している点は、次回の初稿へ反映する価値があります。担当者が提出前に抜けを直せるため、レビュー後の手戻りも抑えやすくなります。
一方、媒体や案件ごとに基準が大きく違う場合や、レビューと全面的な書き直しを一度に求める場合は、仕事の範囲が広がります。まず「問題箇所と理由を示す」「必須項目の不足を確認する」など、良し悪しを確かめられる範囲から始めると安定します。
情報収集・調査:調べる問いと情報源を再利用しやすい
情報収集も、Agent Skillsを使いやすい仕事です。同じテーマを毎回調べる必要はありません。商談前の企業調査や競合記事の確認のように、 調べる対象が変わっても、問い、優先する情報源、比較軸、出力形式が繰り返される仕事 なら、調査手順を再利用できます。
たとえば、次のようなSkillが考えられます。
- 商談前リサーチ:企業の事業内容、直近の発表、想定課題を調べる
- 競合サイト調査:競合サイトの更新内容を決まった観点で確認する
- 製品比較:製品の公式情報を集め、同じ比較項目で表にする
- 業界ニュース収集:業界ニュースから自社に関係する動きだけを抽出する
- SEO競合調査:上位ページを調べ、共通論点と不足論点を整理する
材料になるのは、過去の調査レポート、よく参照する公式サイト、実際に使った検索語、比較表、採用した情報と除外した情報です。単に検索結果を要約するのではなく、「どの問いに答えるために、どの情報源を優先し、どこまで調べたら終えるか」を決めると、同じ水準で調査しやすくなります。
作り込みが必要になるのは、調査範囲が広すぎる場合や、信頼性の判断、将来予測、新しい仮説の発見まで一度に求める場合です。「指定した製品の公式サイトから料金と機能を確認する」は範囲を決めやすい一方、「次に成長する市場を見つける」は、評価基準や追加分析まで設計する必要があります。
整理・分類・抽出:取り出す項目と完成形を決めやすい
会議の文字起こし、問い合わせ文、インタビュー記録など、元になる情報がすでにある仕事もSkill化しやすい傾向があります。 何を取り出し、どの項目へ分け、どの順番で見せるかを、過去の完成例から確認できるためです。
具体的には、次のようなSkillがあります。
- 議事録整理:会議の文字起こしから決定事項、担当者、期限を整理する
- 問い合わせ分類:問い合わせを内容別に分類し、回答に必要な情報を抜き出す
- インタビュー整理:ユーザーインタビューから課題、要望、利用場面を整理する
- 商談メモ整理:商談メモから顧客の課題、懸念、次の対応を抽出する
- FAQ候補作成:複数の社内文書からFAQの候補を作る
過去の入力と完成した一覧を組み合わせれば、残す情報と省く情報が分かります。「元の文章にない情報は推測で補わない」「期限が書かれていなければ未記載とする」など、情報不足時の扱いも実例から確認しておくと、もっともらしい補完を防げます。
分類軸が案件ごとに変わる場合や、複数資料の矛盾を解消する必要がある場合は、追加の判断が必要です。その場合も、まず共通して取り出す項目だけをSkill化し、案件固有の分類は実行時に指定できます。
定型変換・文書作成:入力と完成形の差をルールにしやすい
元になる情報を、決まった形式の文書やデータへ変える仕事も向いています。 入力と完成形を並べることで、並び順、必須項目、表記、削ってよい情報を確かめられるためです。
Skill案としては、次のようなものがあります。
- 調査レポート作成:調査メモから社内共有用のレポートを作る
- フォローメール作成:議事録から参加者向けのフォローメールを作る
- リリースノート作成:コミット履歴からリリースノートの下書きを作る
- SNS投稿作成:長い記事からSNS投稿の候補を作る
- 定型資料作成:決まったテンプレートでWord、Excel、PowerPointの資料を作る
使える材料は、過去の入力と完成品、テンプレート、表記ルール、提出後に直された内容です。毎回人が行っている並べ替えや表記修正を見つければ、次回から同じ手直しを減らせます。
ただし、変換と企画を同時に行うと、必要な判断が急に増えます。「確定した調査結果を報告書へ整える」と「何を調べるか決め、分析し、提案まで作る」は別の仕事です。後者は複数工程の設計が必要なため、作り込みが必要な仕事に近くなります。
手順実行:順序と完了条件がある仕事を再現しやすい
決められた順序で確認や操作を進める仕事では、既存の手順書やチェックリストを活用できます。 担当者が普段どの資料を開き、どの条件で分岐し、何をもって完了とするかが分かれば、その手順をSkillにまとめ、AIに同じ順序で作業を進めさせやすくなります。
手順実行では、次のようなSkillが考えられます。
- テスト実行:テストを決まった順序で実行し、失敗内容を整理する
- リリース前確認:必要な確認を行い、結果を報告する
- ブログ入稿:記事を入稿し、リンクや表示を確認する
- インシデント初動:発生時に初動の確認項目を案内する
- 定例データ更新:データを更新し、異常値があれば報告する
材料になるのは、既存の手順書、実行ログ、よくあるエラー、担当者が途中で確認している項目です。文書に書かれた手順だけでなく、実行中に「この結果なら次へ進む」「このエラーなら止める」と判断した箇所も残してください。
外部システムの更新、公開、削除、送信など、元に戻しにくい操作が含まれる場合は、人が確認する地点を設けてください。また、同じ機械処理を正確に繰り返す部分は、文章で毎回AIに操作させるより、scripts/として固定した方が安定することがあります。scriptを使う場面と作り方は、Agent Skillsでscriptsを使う方法|使う場面・作り方・使い方で詳しく説明しています。
この5種類は、判断材料を集めやすく、仕事の範囲や完成形を決めやすい活用例です。一方、記事作成や企画のように判断や創作を多く含む仕事は、完成形だけでなく、途中の進め方を再利用できる手順へ変える必要があります。
4. 記事作成・企画・分析も、進め方まで整えればSkill化できる
記事作成、企画、分析、提案作成のように判断や創作を含む仕事も、Agent Skillsの対象にできます。 ただし、「良い記事を書く」「効果的な企画を作る」と完成形だけを指示しても、どのように考え、どこで確認するかが毎回変わってしまいます。成果物の形式だけでなく、途中の工程、判断材料、人が確認する地点まで整える必要があります。
作り込みが必要な仕事は、Skill化する価値が低い仕事ではありません。毎回長い説明を行い、何度も修正している仕事ほど、進め方を再利用できたときの効果は大きくなります。違いは、最初から仕事全体を安定して再現するのが難しいことです。
記事作成は「良い記事を書く」を確認できる工程へ分ける
記事作成のSkillで「検索上位を目指せる良い記事を書いて」とだけ指示しても、読者、調査範囲、独自情報、文章の基準が示されていなければ、AIの出力は案件ごとに変わりやすくなります。 普段の記事制作で行っている確認を、順番のある工程へ変えてください。
たとえば、SEO記事を作る仕事なら、次のように分けられます。
- 対象キーワードと既存記事を確認する
- 検索結果から、読者が知りたい論点と上位記事の共通点を調べる
- 想定読者、記事で扱わないこと、独自に深める点を決める
- 根拠が必要な論点を公式情報や一次情報で確認する
- 構成を作り、本文へ進む前に人が確認する
- 章ごとに執筆し、想定読者とのずれを確認する
- 読者体験、根拠、文章表現を見直す
記事作成を工程に分けると、AIに案を出させる部分と、人が条件や内容を確認する部分を区別できます。過去記事、編集者の修正、ライティングルール、競合調査の結果を各工程で使えば、「よい」の意味も具体的になります。
記事の目的や編集体制に合わせて、必要な調査や確認地点を変えてください。実際に1記事を作り、先に確認すべきだったこと、不要だった工程、編集者から戻された箇所を洗い出してください。その結果をSkillへ反映してください。
企画では、アイデアの数より採用条件を明らかにする
企画の仕事では、AIに案を大量に出させるだけならSkillがなくても実行できます。 Skillとして価値が出るのは、自社がどの課題を優先し、何を理由に案を採用または見送るのかを再利用できるときです。
たとえば施策企画なら、「対象顧客のどの課題を解くか」「既存施策と重複していないか」「実行に必要な人員や期間は現実的か」「今回の目的に対して何を評価するか」といった条件を確認します。過去の採用案だけでなく、見送った案とその理由が残っていれば、見た目が似た企画を何度も提案することも減らせます。
ただし、過去の基準だけに合わせると、新しい案まで除外するおそれがあります。法令や予算の上限のように守る条件と、発想の余地を残す部分を分けることが大切です。AIには複数案を出させたうえで、Skillに入れた採用条件を使って比較させ、最終的な選択は人が行う形にできます。
分析は、比較条件と追加確認の基準まで決める
分析では、同じデータを使っても、期間、対象範囲、比較方法が違えば結論が変わります。 そこで、数字の集計方法だけでなく、前提条件、除外対象、異常値を見つけたときの対応まで整えます。
たとえば月次レポートなら、対象期間と指標の定義、前月や前年との比較方法、数値が欠けた場合の表示、変化が大きいときに確認する元データを決めます。過去のレポートと分析担当者の修正があれば、「数字を並べるだけで終わらず、どの変化に説明を付けるか」も見つけやすくなります。
一方、新市場の分析のように正解が定まらない仕事では、最初から最終結論まで自動化しようとすると不安定になります。市場規模を確認する、競合を同じ軸で比較する、前提が弱い箇所を示すなど、確認できる工程へ分けるとSkill化しやすくなります。
提案作成は、相手が判断するための情報をそろえる
提案書の見た目や章立ちをそろえるだけでは、実務で使えるSkillになりません。 相手の課題と提案がつながっているか、比較条件がそろっているか、制約や次の行動が示されているかなど、相手が判断するための情報を確認できるようにします。
過去の提案書、商談メモ、上司のレビュー、受注・失注時の振り返りがあれば、提案先ごとに変える部分と、毎回確認する部分を分けられます。上司が提出前に見る観点を組み込めば、初稿の品質を整えつつ、レビュー後の手戻りも減らせます。
記事作成、企画、分析、提案作成に共通するのは、完成形だけでは良し悪しを判断しにくい点です。 複雑な仕事ほど、成果物を作る手順、途中で使う情報、人が判断する地点をSkillへ含める必要があります。 仕事全体を初版にするのが難しい場合は、検索意図の調査や提出前レビューなど、次の実務で結果を確認できる範囲から始めてください。細かな分割を検討するタイミングは、Agent Skillsはどこまで分けるべき?Skillの粒度と分割タイミングで説明しています。
5. 最初の1件は「価値が高く、判断材料がある仕事」から選ぶ
Skill化したい仕事が複数ある場合は、 繰り返し減らせる負担が大きく、判断材料をすでに集められる仕事 を1件選んでください。最初のSkillでは、目新しい仕事より、普段から修正や説明を繰り返している仕事の方が効果を確かめやすくなります。
第1章の表に候補を当てはめ、価値と作りやすさの両方を確認してください。「価値が高く、判断材料を集めやすい」仕事は、Skillを作った効果と不足の両方を確認しやすい候補です。「価値は高いが、作り込みが必要」な仕事は、調査、構成、提出前レビューなど、結果を確認できる工程に絞って始めてください。
候補を3〜5件挙げ、負担と材料を比べる
候補を選ぶために、細かな点数表や精密な費用対効果の計算を用意する必要はありません。普段の仕事から、次のような候補を3〜5件書き出してください。
- AIへ毎回同じ前提を説明している仕事
- 出力後に同じ直しを行っている仕事
- 上司や専門家から同じ指摘で差し戻される仕事
- 担当者によって完成形や進め方がばらつく仕事
- 定期的に同じ情報源を調べ、同じ形式で報告する仕事
書き出した候補は、次の4点で比べてください。
- 繰り返す機会があるか
毎日、毎週、案件ごとなど、再利用する頻度と人数を確認してください。 - どの負担を減らせるか
AIへの説明、作業時間、手直し、レビュー後の差し戻しなど、繰り返している負担を特定してください。 - 判断材料が残っているか
過去の成果物、修正前後、レビューコメント、テンプレート、参照資料を集められるか確認してください。 - 次の実務で良し悪しを確かめられるか
初版Skillを使ったあと、同じ修正が減ったか、完成条件を満たしたかを確認できる仕事を選んでください。
たとえば「毎週の営業会議レポート」と「新規事業の企画」を比べるとします。会議レポートは、文字起こし、過去の完成版、上司の修正が残っていれば、最初の候補にしやすい仕事です。新規事業の企画は価値が高くても、採用基準や調査範囲が曖昧なら、市場調査や企画レビューを初版の対象にすると結果を確かめやすくなります。
Skillを作らなくても負担が減る仕事は、別の方法を選ぶ
候補を挙げた結果、Skillを作る必要がないと分かることもあります。一度しか使わない指示なら、その場のプロンプトで対応できます。形式だけをそろえたいなら、テンプレートを利用できます。ファイル名の変換や決まった計算のように、判断をほとんど含まない処理は、既存ツールやscriptの方が簡単な場合があります。
また、AIが追加説明なしで処理でき、人による修正もほとんど発生しない仕事は、Skillを作っても差が出にくくなります。 Skillを作ること自体を目的にせず、繰り返している説明・判断・手直しを減らせるかで選んでください。
影響が大きい操作には、人が確認する地点を残す
作る価値と材料がそろっていても、誤りの影響が大きい仕事を最初から自動で完結させる必要はありません。 外部への送信、公開、支払い、削除、契約や法務に関わる判断などは、実行前に人が内容と対象を確認してください。
たとえば提案資料の下書きと提出前レビューはSkillで進め、顧客への送付は担当者が確認して行う形にできます。自動化する範囲を広げる前に、どの操作で人の確認を挟むかを決めてください。
候補を1件選んだら、資料だけでは分からない工程の順番や確認地点を、実際の仕事で確かめてください。
6. 実際の仕事を1件進め、直した手順から初版Skillを作る
最初の対象業務を選んだら、 現時点で想定している流れに沿って、実際の仕事を1件進めてください。 過去の成果物をAIへ渡すだけで初版を作るのではなく、その途中で人が直した進め方も反映すると、実務に合ったSkillを作りやすくなります。
記事レビューSkillを作る場合も、完成した記事と修正前の記事を比べるだけでは、レビューの順番まで分かりません。「表現を直す前に読者とのずれを確認した」「事実確認のあとに編集者の観点で見直した」といった工程は、実際に1件レビューすると見つけやすくなります。
1. 想定フローで実際の仕事を進める
最初に、普段その仕事をどの順番で進めているかを短く書いてください。 記事レビューなら、「記事の目的と読者を確認する、構成と内容を見る、根拠を確認する、文章を整える、修正内容をまとめる」という仮の流れから始められます。
この流れに沿って、AIを使い、実際の記事を1本レビューしてください。進めてみると、「表現を直す前に、読者が知りたい内容へ答えているか確認した方がよい」「修正文を出す前に、問題の理由を示した方がよい」など、最初の順番や出力方法を直す場面が出てきます。
2. 成果物だけでなく、途中で直した進め方を残す
1件目では、修正後の記事だけでなく、途中で追加した指示や変更した順番も残してください。 先に必要だった確認、不要だった工程、AIの指摘を人が採用しなかった理由は、初版を見直す材料になります。AIとのやり取り、修正前後の記事、短いメモがあれば振り返れます。
たとえば、誤字や言い回しは直せても、記事の結論が読者の疑問に答えていなかったとします。次回は文章表現より先に、読者の疑問と記事の結論が合っているかを確認してください。同じ手戻りを防ぐために、成果物の文章だけでなくレビューの順番も直してください。
3. 過去のレビューと追加調査で不足を補う
1件目で動いた流れに、過去記事、編集者の修正、媒体のライティングルールを加えてください。 今回の1件では発生しなかったものの、以前から繰り返し指摘されている点があれば、レビュー項目へ加えてください。
さらに、最近のSEOで重要なレビュー観点をAIに調べさせてください。読者が目的を達成できるか、独自情報や経験が含まれているか、情報源が明確か、タイトルと本文が一致しているかなど、既存のレビューに足りない観点を追加してください。
4. AIに初版Skillを作らせ、次の1件で直す
実際の仕事で確認した内容がそろったら、初版Skillへまとめてください。 自分で整理するほか、AIへ「今回の進め方と修正内容からSkillの初稿を作って」と依頼できます。その際は、次の材料を渡してください。
- 実際に動いたレビュー手順と、途中で変えた順番
- 使用した記事と、レビュー後の修正内容
- 編集者が重視する観点と、過去のレビューコメント
- 追加調査から加えたレビュー観点
業務名だけを渡してゼロから考えさせるのではなく、実際の仕事で確認した材料を渡して初稿を作らせてください。
AIが作ったSkillは完成形ではありません。 別の仕事でもう一度使い、前回と同じ追加説明や修正が発生した箇所、工程の抜け、不要だった指示を直してください。最初からすべての例外を盛り込むより、実務で必要だと分かった内容だけを反映した方が、使いやすいSkillに育てられます。
SKILL.mdの基本構造や作成方法は、Agent Skills(SKILL.md)の作り方ガイドを参照してください。実務で見つかった改善点をSkillへ反映する方法は、Agent Skillsをどう改善する?実務のフィードバックからSkillを育てる方法で詳しく説明しています。
まとめ
Agent Skillsは、決められた職種や定型業務だけに使うものではありません。 レビュー、情報収集、整理・抽出、定型変換、手順実行は、判断材料と完成形が見つかりやすいため、最初の候補に向いています。記事作成や企画、分析、提案作成も、途中の工程と判断地点を整えればSkill化できます。
候補を選ぶときは、 「繰り返し減らせる負担があるか」と「実務から判断材料を集められるか」 を分けて確認してください。毎週行っていても判断基準が分からない仕事は、結果を確認できる工程から試してください。簡単に作れても再利用する機会が少ない仕事は、短いプロンプトや既存ツールで対応できる場合があります。
最初の1件を実際に進め、そこで直した手順から初版Skillを作ってください。 実務で必要だと分かった手順や判断基準を反映すると、自分やチームの仕事に合うSkillへ育てられます。