AIでアイデアを大量に出せる時代、企画力は何になるのか?

仕事AI時代の仕事2026.10.24
AIでアイデアを大量に出せる時代、企画力は何になるのか?

AIにテーマを渡すと、短時間で10個、20個とアイデアを出せます。会議の前に候補を用意したり、自分だけでは思いつかなかった方向を探したりする負担は小さくなりました。

一方で、案が並んだ画面を見ながら「どれを選べばよいか分からない」と止まることもあります。数は増えても、その中に課題に合い、さらに検討する価値がある案が含まれているかは別だからです。

AIで案を増やしやすくなった今、企画力には、検討する案を絞り、決めるために足りない情報を見つけ、確かめながら案を更新する力も含まれます。

この記事では、AIでアイデアを出した後、大量の案をどう整理するか、どれをさらに検討するか、決められないときに何を確かめるかを順に説明します。

この記事のまとめ

  • 案が増えることと、その中に検討する価値のある案が増えることは別です。
  • AIで大量に出した案は、似た内容をまとめてから人が検討します。
  • 案を選べないときは、「何を重視するか決まっていない」のか、「決めるための情報が足りない」のかを分けます。
  • 情報が足りない場合は、全部を調べず、分かれば選び方が変わることから確かめます。
  • AI時代の企画力には、案を絞り、分からないことを見つけ、確かめながら更新する力も含まれます。

アイデア出しから企画案の比較、企画書作成までの全体像は、生成AIで企画を進める方法で確認できます。

1. AIで増やせるのは「案」であり、「検討に値する案」とは限らない

AIが出した案には、現時点で詳しく検討する価値があるものと、そうでないものが混ざっています。 AIが案を出した直後は、その実現可能性や効果がまだ確かめられていません。

例えば、オンライン講座の受講継続率を高める企画について、AIから次のような案が出たとします。

  • 学習日数に応じてポイントを付与する
  • 毎週、受講者同士の交流会を開く
  • 一人ひとりに担当者が学習内容を提案する
  • 進捗に合わせてリマインドを送る

それぞれ異なる方法で受講継続率に働きかけますが、課題に合うか、実際に運営できるかは、この時点では分かりません。AIから20案が出たこと自体と、その中にさらに検討する価値のある案があることは別です。

案の数と、現時点でさらに検討する案の数は分けて考えます。

2. AIで案を出した後の流れを整理する

AIで多くの案を出したら、人が一つずつ詳しく読む前に、まずAIで整理できます。 似た案をまとめ、重複を減らし、方向ごとの違いを整理すると、数十個の案を数個の方向にまとめられます。

この記事では、AIで案を出してから企画を進める流れを次のように整理します。

  1. 案を広げる
    AIや自分の発想から、複数の方向を出します。
  2. AIで整理する
    似た案をまとめ、重複を減らし、違いが分かる形にします。
  3. 検討する案を絞る
    課題や目的から明らかに外れる案を除き、詳しく検討する価値があるものを残します。
  4. 比べる
    今回の企画で何を重視するかを決め、残った案を比較します。
  5. 決めるために足りないものを見つける
    何を重視するか決まっていないのか、情報が足りないのかを分けます。
  6. 確かめて案を更新する
    必要なことだけ調べたり試したりして、案を修正し、次の検討へ進める案を決めます。

この流れは一本道ではありません。確かめた結果によって元の案を直したり、別の案へ戻ったり、新しい案を加えたりすることもあります。

AIで案を出しやすくなるほど、大量の案を整理し、どの案を詳しく検討するかを決め、必要なことだけ確かめながら企画を進める仕事も重要になります。

案を広げる方法から確認したい場合は、発想力とは「思いつく力」なのか?で、自分の外から視点を持ち込む考え方を紹介しています。

3. まずAIで案を整理してから、人が検討する

AIで20個、30個と案を出したら、まずAIに内容の近いものをまとめてもらいます。 そのうえで、人が詳しく比較する案を絞ります。

例えば、次の作業を任せられます。

  • 似ている案をまとめる
  • 同じ内容の言い換えを統合する
  • 方向ごとに分類する
  • 各グループの違いを一文で整理する

AIに整理させた後は元の案も残し、まとめる過程で重要な違いが消えていないか確認します。

オンライン講座の継続率を高める案が20個出ても、整理すると次のような方向にまとまるかもしれません。

  • 学習を思い出してもらう
  • 学習の進め方を案内する
  • 他の受講者とのつながりを作る
  • 達成感を得られるようにする

ここでAIに任せるのは、 案同士の違いを人が比較できる形まで整理することです。 最も良い案は、その整理結果をもとに人が検討します。

整理した後の最初の選別では、次の点を見ます。

  • 課題や目的から明らかに外れていないか
  • すでに分かっている制約に反していないか
  • 詳しく検討する理由があるか

ここでは、明らかに外れるものを除き、人が詳しく検討する案に絞ります。良い案を厳密に選ぶのは後の段階です。

条件や効果がまだ分からない案は、この段階で落とさなくても構いません。「ここが分かれば選べる」という点を添えて残せます。

4. 何を重視するかは、企画の目的に合わせて決める

検討する案が複数残ったら、今回の企画で何を重視するかを決めます。 市場性、新規性、実現しやすさ、費用などをすべて同じ重さで採点すると、自社の目的に合う案を選びにくくなります。

何を重視するかは、次の順で考えると整理しやすくなります。

企画で変えたいことを一文にする

最初に、企画の目的を具体的にします。「受講開始後の1週間で学習が止まる人を減らす」のように、対象と変えたい状態を含めます。

目的が具体的になると、案を比べるときの重点も決まります。この例なら、受講者全体の満足度よりも、開始直後の行動を変えられるかを優先します。

守る条件と、優先する成果を分ける

次に、満たす必要がある条件と、案を比べるときに優先する成果を分けます。

  • 守る条件
    期限内に試せる、現在の運営体制で扱える、利用者へ過度な負担をかけないなど、案に必要な条件です。
  • 優先する成果
    継続率への影響、試しやすさ、将来の展開可能性など、条件を満たした案の中で重視するものです。

すべてを最大化しようとせず、企画に応じて優先順位を決めます。今月中に改善の手がかりを得たい企画なら、長期的な効果の大きさより、短期間で試せることを優先する場合があります。反対に、長期運用する基盤を決めるなら、試しやすさだけで選ぶと後から作り直しが増えるかもしれません。

AIは比べる観点の候補出しに使う

AIは、案を比べる観点を広げたり、案ごとの利点と弱点を同じ形式で整理したりする場面で使えます。例えば、次のように尋ねます。

この企画の目的は「受講開始後の1週間で学習が止まる人を減らす」です。
期限は1か月、追加の運営担当者は置けません。
候補を比べる観点を挙げ、それぞれが必要な理由を説明してください。
また、この目的と制約に照らして、今回使わなくてよい観点も示してください。

AIが示した観点は、そのまま採用せず、企画の責任者が目的と制約に照らして選びます。 AIには比べる観点の整理を任せ、何を重視するかは企画の目的に基づいて決めます。

AIの出力を確認し、採用・修正・追加確認など次の行動を決める方法は、AI時代に重要になる「判断力」とは?で詳しく解説しています。

5. 選べない理由を「重視すること」と「足りない情報」に分ける

候補を比べても決まらないときは、さらに考え続ける前に、なぜ決められないのかを確認します。 まず、「何を重視するか決まっていない」のか、「決めるための情報が足りない」のかを分けます。

選べない理由起きていること次にすること
何を重視するか決まっていない比べるときの優先順位が決まっていない目的と制約に戻り、優先順位を決める
決めるための情報が足りない案を比べるために必要な事実を確認できていない何が分かれば選べるかを言葉にする

この二つを分けると、関係者で優先順位を話し合うべき場面と、調べたり試したりする場面を見分けられます。

何を重視するか決まっていないなら、優先順位を決める

A案は新規性が高く、B案は短期間で実行できるとします。選べない理由が「新規性と実行速度のどちらを重視するか決めていない」ことであれば、情報を増やしても結論は出ません。

この場合は、企画の目的、期限、失敗したときの影響に戻ります。今回達成したい成果は何か。いつまでに決める必要があるか。許容できる費用やリスクはどこまでか。これらを整理し、優先順位を決めます。

意見が分かれたときは、次の問いを使って、何を優先するか話し合ってみてください。

今回の企画では、どの成果を優先するのか。なぜそれを優先するのか。

企画の責任者が優先順位を決め、その理由を言葉にすると、関係者も何を重視するかについて話せます。案の好き嫌いによる議論も避けやすくなります。

決めるための情報が足りないなら、分からないことを言葉にする

一方で、何を重視するかは決まっていても、案を比べるための情報がない場合があります。

例えば「開始後1週間の継続率への影響」を最も重視すると決めても、リマインド案と少人数の交流案のどちらが対象者に受け入れられるか分からない状態です。この場合、迷いの原因は、利用者の反応に関する情報不足です。

情報が足りないかは、次の問いで見分けられます。

  • ある事実が分かれば、どちらを選ぶか変わるか
  • その事実について、現在は何を根拠に話しているか
  • 関係者が同じ情報を持っても結論が割れそうか

特定の事実が分かれば選べるなら、その事実を調べます。同じ情報を共有しても、何を優先するかで意見が割れるなら、優先順位の検討に戻ります。優先順位と必要な情報の両方が曖昧な場合は、先に優先順位を整理してください。重視することが決まらなければ、集めるべき情報も決めにくいからです。

選べない理由を分けると、無理に結論を出す代わりに、次に決めることと確かめることが明確になります。

6. 全部を調べず、分かれば選び方が変わることから確かめる

決めるための情報が足りないと分かったら、全部を調べるのではなく、分かれば選び方が変わることから確かめます。 企画段階ですべてを確定しようとすると、時間も費用も増えます。

まず、案ごとに分からないことを書き出します。そのうえで、次の三つを考えてください。

  1. 何が分からないのか
    「需要が不明」を、「対象者が週1回の交流会へ参加したいと思うか」のように、具体的な問いへ変えます。
  2. 分かれば選び方が変わるか
    どちらの結果でも同じ案を選ぶなら、今すぐ確かめる優先度は高くありません。
  3. 少ない手間でどう確かめるか
    精密な調査の前に、既存データを調べる、概算する、案の一部だけ試すといった方法で、選ぶための情報を集めます。

確かめ方は、分からないことに合わせて選びます。

  • 事実や既存事例を調べる
    市場の状況、利用者の行動、類似施策の条件を知りたいときに使います。AIで調査する際の問いの分け方や情報源の確認方法は、AIで調査業務を自動化する方法で解説しています。
  • 費用や必要時間を試算する
    実現できそうか、案によって費用や必要時間がどの程度違うかを知りたいときに使います。
  • 小さく試す
    動作するか、運営できるか、対象者に期待した行動が起きそうかを見たいときに使います。
  • 対象者の反応を見る
    案の意味が伝わるか、使いたいと思うか、利用の妨げがあるかを知りたいときに使います。

オンライン講座の交流案なら、対象者に参加意向を聞き、既存の会議ツールで一度実施するところから始められます。参加しやすい時間もあわせて聞きます。関心は高いのに時間が合わないと分かれば、「交流が不要」ではなく、「決まった時間に集まる形が合わない」と考えられます。

AIは、案を選ぶために何を確かめるかを整理するときに使えます。対象者に聞く質問を考えるときにも役立ちます。 どの案を進めるかは、実際に調べた結果や対象者の回答をもとに決めます。

7. 確かめた結果を使い、案そのものを更新する

確かめた結果を使って、案そのものを修正します。 複数案の一部を組み合わせたり、必要に応じて別の案へ戻ったりすることもできます。

交流会の例で、受講者は他の人の進み方を知りたい一方、決まった時間には集まりにくいと分かったとします。この結果を使えば、交流会案を残しながら形を変えられます。例えば、週1回の交流会を、進捗や工夫を好きな時間に共有できる仕組みへ変えられます。

案を比べ、分からない点を確かめると、順位以外にも次のことが分かります。

  • 課題の捉え方がずれていた
  • 対象者に必要な価値が具体的になった
  • 守るべき制約と、変えられる条件が分かった
  • 複数案のうち、残すべき要素が分かった
  • 新しい案を出すための材料が増えた

案を更新するときは、自分で考えた案を残すかどうかも判断します。ある研究では、同じ案を「自分で作った案」として評価した場合と、「他人が作った案」として評価した場合を比べています。自分で作った案として評価した場合は、質の評価が低い案まで残しやすい傾向が見られました。

この結果を踏まえると、実務では、自分の案だけを残しすぎないよう、AI案と自分の案について、目的、期待する効果、費用、分からない点を同じ形で書き、同じ観点で比べる方法が考えられます。

分からない点を確かめると、案のどこを残し、どこを変えるかも判断しやすくなります。得られた情報を使って、案を修正します。

案の表現だけを直すのか、情報・方法・前提まで戻るのかを判断するときは、AI時代に必要な「修正力」とは?の4段階も使えます。

まとめ

AIによって、多くの案を短時間で出し、似た案を整理するところまでは進めやすくなりました。その後に人が考えることは、次の三つにまとめられます。

  • 検討する案を絞る
  • 決めるために足りないものを見つける
  • 確かめながら案を更新する

案を選べないときは、まず次の二つを分けます。

何を重視するか決まっていないのか、決めるための情報が足りないのか。

情報が足りないなら、選ぶ前に必要なことを確かめます。

全部を調べず、分かれば選び方が変わることから確かめます。

何を重視するかと、どの情報が足りないかを分けて考えると、AIで増えた案を眺めて終わらせず、次の判断や確認へ進めます。

参考資料

仕事

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